器屋chigiriオーナー 西島千恵子さん

静岡県三島市にある「chigiri」という器屋を営むオーナーの西島千恵子さん。柳の木が生い茂りどことなく赴きがあるそのお店には、季節にあわせた作家ものの器が並びます。学生時代に器に魅せられた彼女は、様々な展示会に足を運び、作家さんと知り合いになったのだとか。その縁がつながりオープンしたお店には、彼女の器への愛情が詰まっています。

器の魅力に魅せられて

元々食べることや料理をすることが好きだった西島さん。器との出会いは大学時代に遡ります。「部活動の勧誘チラシで陶芸を見かけて…これだ!と思い美術部に入部しました。活動もしっかりしていて、銀座のギャラリーで展示会を行ったりしていましたね。器の作り方もそうですが、その時の経験がお店のディスプレイなどに活かされているのかもしれません。」大学卒業後は地元の企業に就職しつつも趣味として作品を作ったり、気に入った作家ものの器を購入したりしていたそう。

併設する自宅で見せていただいたキッチン収納。大学時代から集められた器はどれも日常的に使っているのだとか。
大切だからこそ食卓を共にするのです。

夕食時、西島さんの手料理を彩る器たち。
器は料理の「より美味しい」を引き出してくれると西島さん。

「それこそスーパーで買ってきたお惣菜を器に移してあげるだけで、その料理にパッと明かりが灯るような、そんな表情を見せてくれます。料理の味が変わるわけではないけれど、人が感じる味は料理だけではなく周りの雰囲気も関係しているのだと感じます。器を使うということは作った誰かを感じるということかもしれません。」毎日やってくる食事の時間。時間がなかったり、準備が大変だったりと、どうしても憂鬱になってしまう時もありますよね。そんな時に心躍る器が食卓に並ぶだけで、食事の時間が少し変わってくるのかもしれません。

暮らしに器を取り入れて

「初めてでも取り入れやすいのは6寸皿ですよ。」と色んなサイズのお皿を出しながら話してくれました。左上から5寸皿・6寸皿・7寸皿・8寸皿。おすすめの6寸皿はごはんや汁物が並ぶ食卓の、メインのお皿として使えるとのこと。8寸皿は幅のある縁を活かせば、余白が生まれ料理に高級感を与えてくれます。

作家ものの器というと身構えてしまいますが、意外と手入れは難しくないんだと西島さん。「作家さんによって線引きは異なりますが、食洗機であっても使用方法に気をつけていただければ大丈夫です。簡単にまとめると、陶器、磁器(金,銀,色絵のものを除く)、ガラスは食洗機を使用しても大丈夫。漆器、木工製品は食洗機の使用は避けた方がいいです。」

さらに「食洗機を使う上で一番の問題は“欠け”です。工業製品に比べて作家ものの器は土が柔らかいものが多く、器同士がぶつかる事により欠けやすくなります。ですので、洗浄時の水圧で器が動かないようにしっかりと固定するのがポイントです。」と教えてくれました。食洗機の乾燥機能は器にとってむしろ好相性。器に残る水分をしっかりと乾かさないと、カビの生える原因になってしまうそう。

手持ちのお茶碗で陶器と磁器の違いを説明してくれました。裏の釉薬のかかっていない部分を触ってみるとどちらなのかわかるのだそう。写真左の磁器は白く、写真右の陶器は土の色が確認できます。それぞれに電子レンジで使用できるものの、陶器は吸水性があるので料理を一晩のせて再加熱する際は注意が必要です。

うっかり欠けてしまった場合は…と教えてもらったのは日本古来からある技法「金継ぎ」。見たことがある人も多いのではないでしょうか。漆で補修し仕上げに金で装飾する方法。少し装いが変わります。ただ時間や手間、コストがかかるためすべてにおいてオススメというわけではなく、思い切って新たな器を迎え入れるのも手です。器と相談しながら決めてみてください 。

好きを詰め込んだ「chigiri」

そんな西島さんがオーナーを務める器屋「chigiri」には彼女が大切にする「ごはんが美味しくみえる」器たちが集っています。8坪の店内は器一つひとつの個性が程よい距離感で隣り合い、ゆったりした時間が流れる居心地のよい空間。表札の割れに添えられているパーツは「ちぎり」と呼ばれ、屋号の由縁ともなっています。人と器、作り手と使い手を繋ぐ場所でありたいという彼女の想いが込められています。

季節によって変わるディスプレイ。定期的に開催される展示会では特集する作家に合わせてディスプレイの雰囲気ががらっと変わります。秋の終わりに訪れた今回は土鍋が存在感を放っていました。しっかりとした重みを感じるその土鍋は、土の独特な肌ざわりと柔らかなフォルムによって、温かい料理にさらに温もりをプラスしてくれるような作品。

肌寒い季節に、暖かい料理を家族で囲みながら食事を楽しむ。そんな時間に彩りを与えてくれる器は、そこにあるだけで手作りの温もりを感じさせてくれるものばかりです。

次回展示会のご案内

「髙田かえ・鈴木進 二人展」

会期:2020年12月19日(土)~12月26日(土)
   11:00~17:00(土曜日のみ19:00迄)

静岡県森町にて作陶されているご夫婦の展示会。土を指先で伸ばしながら成型する「手びねり」という技法で作られた髙田さんの作品は無機質でありながら、生き物のような表情を見せてくれます。器や茶器を製作する鈴木さんの作品は、古物を思わせる陰影とモダンなデザインが上手に合わさっており、お茶の時間を印象的にしてくれます。

※掲載されている一部の器はオーナーの私物になります。
あらかじめご了承ください。

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◇chigiri
静岡県三島市中央町2-37
TEL.055-941-9416
HP.http://utuwa-chigiri.com/