紫陽花がまだ美しく咲く頃、鎌倉の路地を通って、黒い「焼杉」が美しい住まいを訪問した。「焼杉」とは、その字の通り、杉を、黒くなるまで焼いた木材のこと。国内では西の方に行くと、「焼杉」の外壁の家を多く見ることができ、焼杉の家からは、どこか懐かしい日本を感じることができる。炭素状になるほど焼かれた杉は、耐候性や、耐久性にも優れた、伝統的な外装材だが、近年では外壁の意匠として使われることも多くなり、身近な外装材として「焼杉」の人気は再燃しているよう。

横張りの「焼杉」は、山小屋のような雰囲気で、鎌倉の山によく馴染む。

当初、逗子や、葉山など海に近いエリアで土地を探していたというオーナーご家族は、この空と、山の稜線が気に入ってこの土地に決めたという。

東京都内から、鎌倉へ移住

以前は、都内のマンションに暮らしていたというオーナーは、終の棲家として、鎌倉の地を選んだ。毎日鶴ケ丘八幡宮の境内を通って通勤をしているというご夫婦。朝早く、人のいない鶴ケ丘八幡宮は、神秘的で、清々しいそうで、東京までの通勤時の楽しみという。家を建てる前の休日は、よくゴルフに出かけていたが、家を建ててからは、都会の喧騒から離れた緑の多い自宅で過ごす時間が増えたというご夫婦にとって、手入れの行届いた庭を横目に、ウッドデッキに枝豆と冷えたビールを並べて夫婦でのんびりが一番の贅沢になった。

ドアには、古建具。照明器具はアンティークで、どこか懐かしいインテリアに

土地が決まった時、この場所に建てたいのは「昭和レトロな家」だと思ったというオーナー。昭和の頃が題材の朝ドラに出てくるような住まいを思い描いていたのだとか。ドアや、建具などに、時代家具屋古福庵で仕入れた古建具を使い、照明もアンティークの照明、そしてリビングやダイニングには、色とりどりのステンドグラスが彩っている。もちろんステンドグラスもアンティーク。

重厚な古建具の玄関ドアを開けると、しっとりとした空気に包まれるのは、クロスを使わずに、漆喰で仕上げているため。また梁や柱をむき出しにし、黒く塗装することで、「昭和レトロ感」をさらに盛り立てる。玄関からリビング、和室や、庭まで見通せる廊下には、鎌倉の山から流れる涼しい風が吹き抜けていく。(設計・施工/(株)平成建設)

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時代家具建具の店 古福庵
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